かものはし日記2003年1月号


1月1日

あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いいたします
今年のテーマは
アグレッシブ
ぼくに一番足りないものだからね

実家でお正月
友人に勧められた
村上春樹の「スプートニクの恋人」をつらつら読む
実は村上春樹って読んだことがないのだ
村上春樹の小説を読んだ人の多くは
この小説は私にしかわからない、と思うらしい
そのあたりの理由を探りながら読む

実家よりすぐ帰還
ここにいてもすることがない(笑)

1月2日

「スプートニクの恋人」を読み終える
なるほど
村上春樹の小説は
読む人の一番繊細な部分に愛撫のように触れてくる
小説というよりは何かの美しい生き物の触手のよう
人の一番繊細な部分とは
孤独
ほんとうに他人の孤独に触れられるものは
音楽とか小説とか詩のような
間接的なものだけなのかもしれない
生身の人間は他人の孤独には決して触れられないのかも
それは悲しいことなのか
素敵なことなのか
多分その両方なのでしょう
彼の小説のすばらしさはそのあたりにあるのかも

何かするのがもったいないくらい
お正月の東京は静か
車のエンジンとアスファルトが奏でる低周波が部屋まで伝わってこないのがすばらしい
もう一冊村上春樹を読む
「神の子供たちはみな踊る」
読めば読むほど
本当に彼の小説はインプロヴィゼーションなんだということが
実感できる
構造物ではなく流体
ジャズで言うところの
テーマからアドリブに変わる瞬間
アドリブからテーマに戻る瞬間の恍惚感がある
彼の小説を読むと音楽の聴き方が変わる
そういう気もする
ぼくはそれを絵でやりたい、と改めて思ったのでありました

1月3日

あと
彼の小説には嫉妬という感情が欠落している
というか
嫉妬という感情が小説の一番底に流れている
だからほとんど気がつかない

どこに行っても自分から逃げることはできない
というフレーズがよく出てきます
そういうことを書きながらも
自分を見つめることが心地よくなるようにできている稀有な小説だと思うのでした
不思議

東京は雪です
ガラス窓を触ると氷のように冷たい

友人と長電話のあと
雪の降る街中を散歩
今年の冬は寒いね
暖冬を通り越して氷河期かな

定食屋で黒酢の酢豚というのをいただく
なるほど、普通の酢の代わりに黒酢を使うと
なかなかワイルドな酢豚になるね
ちょっとジャズだ
(俺は何でもジャズだな(笑))

1月4日

午前中は絵を描いて
お昼頃図書館に行き
ピアノトリオのジャズCDを3枚
村上春樹の小説を7冊とパソコンのハードウエアの本を借りてくる
(ピアノトリオなんて絶対お金を払って買いたくない。だっていかにもおしゃれなジャズっていう感じなんだもん)
夕食までに春樹の「ノルウエイの森」上下巻を読み終える
弟がエロ小説だったという感想しか言わなかった
15年位前のベストセラー小説
確かにエロ小説だね
読者の孤独な部分に触れてくるなんて
乳首や陰毛に触るよりいやらしい(笑)

1月5日

どうせ毎年暖冬だからと
セーターを全部捨ててしまったのだけれど
(セーター嫌い)
さすがに今年は寒くてセーターを買うことにしました
やせ我慢する歳でもないし(笑)

心の真ん中も
曼荼羅の真ん中も
空洞
何もない
それがすばらしい

1月6日

天気がよくて、暖かい一日
上野近辺を散策
実は、下町に仕事場を借りようと思っているのです
前から下町を毎日散歩しながらすごしたいと思っていたのさ
適当に目に付いた不動産屋さんに入ったら
やたらといい男でやさしそうなお爺さんがいたので
そこにお世話になろうと決めてしまった
(ぼくは人を顔で判断します。顔の形ではなく表情で。顔はその人のメンタリティのすべてを表していると思うから)
そして、部屋を案内してくれるというので
外に出たら、自転車が2台
普通は、車で案内してくれるものなんだけど
自転車っていうのが素敵でしょ
じいさんとツーリングっていうのが下町っぽい(笑)
そして案内されたのが
1階がお豆腐屋さんのマンションの最上階(6階)
景色も日当たりもいいし、角部屋で隣の部屋の音も聞こえないし
これ以上いい物件はないなと思い
一発で決めてしまいました
仮契約をして、大正生まれのやたらといい男のじいさんとコーヒーを飲みながらしばし談笑
あんまりいい男なので、若いころはさぞかしもてたでしょう、と聞いたら
実はぼくは妾の子供で・・と
いろいろと楽しい話を聞かせてくれました
(女房を泣かせることはなかったそうです
それは浮気をしなかったのか、ばれないように巧妙にしたのか、わかりませんが(笑))

1月7日

1月5日のイラストをちょっと直す

おとといちょっと飲みすぎたのがまだ尾を引いているような気が・・

ブライアン・デ・パルマの映画femme fataleのサントラを聞く
「運命の女」って
出会いはすべて男だろうが女だろうが運命だよね
まあ、異性のほうが与えた影響は大きいかもしれないけど
坂本龍一作曲
ラヴェルのボレロとサティの旋律を合わせたような曲
bolerishが素敵
サントラとはいえ、きれいにまとまったアルバムです

1月8日

愛と憎悪が同じところからやってくるように
笑顔と泣き顔も、同じ顔
同じところからやってくる

1月9日

新しい仕事部屋(下町)の契約に行く
契約後、不動産屋さんのいい男のじいさんに
お酒をご馳走になる
サントリーオールドをホットで
(オールドって言うのが、下町っぽい)
しかも午前中から
お昼時は、鍋焼きうどんまでご馳走になり
ふらふらになって帰宅
昼間から、真っ赤な顔をして電車に乗るのは
ちょっと恥ずかしかったな
恐るべき下町(笑)

夕方
美人が遊びにくる
昔、某パソコン誌で担当だった編集者さん
今は、芝居もやってるし
ジャズボーカリストの綾戸智絵さんといっしょに歌も歌っている
人妻。
一見クールな感じだけれど、実はとても情熱的
雑談の中心は生命力について
綾戸さんは歌の指導をするとき
上手に歌うことより、自分自身をもっとストレートに出すことを求めるらしい
自分の中の生命力を恥ずかしがらずに前面に出してみる
全身が歌になれ!
生きるということはそういうことかもね
まじめで誠実な彼女
もっと悪い女になってね
というのは、ぼくの助言(笑)

1月10日

「上目遣い」という字は
上目使い
というのが正しいね
大抵の男はこれでころっとくるもの
魔力だね
セカンドシーズンがうれしいロボットアニメ「ビックオー」に出てくる
アンドロイドのR・ドロシー嬢
あの子の上目遣いがとても好き(笑)

人というのは
誰でも、やさしいし愛のある存在なのですが
ただやさしさも愛も無尽蔵ではなくて
限界があるのです
それぞれの限界値が違う
その限界値ぎりぎりを見極めて、やさしさとか愛を引き出しあうのが
人間関係の醍醐味ですね(笑)
そうすることで鍛えられて
ちょっとずつ限界値も広がったりするわけです
(狭まる場合もありますが)
だから
限界値の見極めが大事なのです
そういう見極めを
感受性とか繊細さというふうに表現するんだと思います
無償の愛なんて
鈍感な人間のぬかすせりふだよね
ただ
限界値のものすごく高い人は実際にいて
そういう人はぼくらから見れば
無償の愛を行使しているように見えるのは確かですけど

1月11日


自分の横顔がチェックできないのが
最大の弱点
(まあ、ちょっと無理すれば何とか見えるかもしれないけれど)
正面顔は意識領域
横顔は無意識の領域
誰かがとった写真で自分の横顔を見ると
まるで知らない人がそこにいるみたい
自分の無意識がチェックできない鏡なんて
何の役にも立たない
女の子は男の子の横顔にほれる
逆もまたしかり
だから横顔のチェックは大事なんだけれど
チェックしたら無意識じゃなくなるか(笑)

美女三人(人妻2、独身1)と
ザバダックのライブへ
最近のザバダックはばりばりのロック
やさしい旋律とハードなリズムセクションに酔う

1月12日

今日は朝風呂

最近のお気に入りは
メデスキー・マーティン&ウッド
たぶん同世代のニューヨーク系ジャズバンド
同世代なのでプログレっぽい(笑)
そしてジミー・スミスのオルガン(アグレッシブ)っぽくて、サンラ(フリージャズ)っぽい
ジャムバンドブームはまだまだ続いているみたいだね

どうせつまんないと思って聞いてみた
キングクリムゾンのトリビュートアルバムは
思ったほど悪くなく
コントロールドブリーディング(ノイズ系ロックバンド)の
トーキングドラムは秀逸です
期待していたブランドXのレッドはいまいち
ぜんぜんレッドゾーンって言う感じじゃないんだもの
人生の節目節目で必ずレッドを聞く友人がいて
やっぱり
自分のメンタリティをレッドゾーンまで持っていこうとしているのかもね
勇気というのはある意味レッドゾーンだから

1月13日

雲の中にも蒼き空はある也
陽はいつも輝いている也
怒りの中 悲しみの中 煩いの中に喜怒哀楽を見ず
輝しき光を見
人の生くるはたらき悟るは
養生ということ知る人也
(整体師 野口晴哉)
友人がメールで送ってくれました。
人は
自然の中から倫理観や生き方を学ぶしかなく
一番身近な大自然は、本人の身体であり
人は身体から生き方を学ぶのが一番手っ取り早いような気がします
迷わず
自分の足の歩く方角へ

あまりやったことのない交渉ごとを何件かこなす
なかなか楽しいし
なかなか興味深い
なるほどこういうふうにすると
即座に信頼関係を築くことができるのかとか
抜け目がないのだ
勉強になるね
大人の世界
交渉はなかなか好感触
うまくいきそうです
夜、祝杯
(最近飲んでばかりの俺)

1月14日

友人が
絵日記になってから、会社で見にくくなったというので
もっと見にくくしてやろうかなと(笑)

MXテレビで未来少年コナンの再放送を見ていたら
ハイハーバーの村長さんが
コナンとジムシーを
面倒を見る大人がいないのを理由に
山むこうの孤児の村に追いやろうとするせりふがあって
ずいぶん排他的な町じゃないかと思ってしまった
何よりも子供に愛情を注ぐのが理想郷だろうが。
ハイハーバーには住みたくないね(笑)

1月15日

江刺より図書カードが届きました
江刺の町並みと種山の風景と風の又三郎をイメージして絵本風に仕上げた
全国共通図書カードです。
江刺での展覧会つながりでいただいたお仕事です
地元の新聞に紹介文が載るから、どういうふうに書きます?と聞いてきたので
担当のMさんよりスケベと書いて、といっておきました(笑)

1月16日

風邪をひいて寝込む
ぐわっと熱が出て
ばたんと倒れて
数時間寝込んで
汗をびっしょりかいたらすっきりしました
やはり風邪は薬を使わないのが一番
薬を使うと
風邪の進行が遅くなってこじれてしまうのです
風邪にはやりたい放題やらせておいて
とっとと出て行ってもらうに限りますね

1月17日

女性というのは
生まれたときから女で
死ぬまで少女だな
(これって、われながら名言(笑))

1月18日

仕事場移転に備えて
本を100冊ほど減らす
(ブックオフに送ったら7400円でした。とほほ)
歳を重ねるたびに身の回りの物を減らしたいという衝動に駆られる
昔は本箱が6つくらいあったのだけれど
最終的にはひとつにしたい
(いまは2つ)
てめえの身体だけあれば十分っていつも思うけれど
社会生活をしているのだから
そういうわけにもいかないものね
持ち物は身体だけ
歩いていけないところは行かない、と
心ひそかに思っているのだが
ずいぶん減らしたとはいえ部屋の中に物はけっこうあるし
電車にも飛行機にも乗る小心者です(笑)

1月19日

寒いのに
ぶっかけうどんを食べる
うどんもそばも冷たいのに限るね

1月20日

散髪屋さんで1ミリ坊主刈りにしたら
昨日のうどんとの相乗効果か
風邪がぶり返す
というか
この間のは高熱が出たからインフルエンザかも
今回のが風邪のウイルス
毛糸の帽子を買おうかな
なんか今週はへろへろ

1月21日

今日は後藤の誕生日です
おめでとさん

MXテレビで再放送中の未来少年コナンを毎週楽しみに見ているのだ
子供のころ見ていたときは気が付かなかったけれど
ハイハーバーって共産主義なのね(笑)
SFとかファンタジーは、新しい価値観や未来のシステムを提示したり
現実の世界に対して批判的だったり示唆的だったり教訓的だったりと
物語に語りたいことが明確に存在していたのだけれど
宮崎監督の最新作「千と千尋」は
そういうものがほとんどなく
何も語っていないところがすばらしい、と思う
(何も語らなくても作者が大切にしているものはちゃんと伝わる)
そこには生命力だけが存在する
そういうファンタジーは珍しいし
ファンタジーの進化といってもいいんじゃないのかな
金曜日のテレビ放映が楽しみ

1月22日

毛糸の帽子を買ったら
とたんに元気
やっぱり頭が寒かったのね(笑)
まだ多少微熱が続くけど

引越し先で使おうと思って
YAHOO!BBに入ってしまう
寒空の中、声を張り上げてモデムをただで配っている姿は尋常ではない
彼らの心意気に答えなければ(笑)

友人の女の子が2人ほど遊びにきたので近所の居酒屋へ
二人とも若干ぐれててとても不良だが美人です
二人で無神経シスターズと名乗っているらしい(笑)
俺に言わせりゃ女なんてみんな・・・
ひとりは、ちょっと元気がない
農閑期らしい(恋愛をしないということ)
もうひとりは
若干酒乱で俺に絡んでくる(笑)
人というのは
いろいろな面があって楽しいよね
愛らしい二人でありました

1月23日

熱が再び38度を越す
まあでもそれほど体もだるくないし
たまに咳と鼻水がでるのを我慢すれば
それほど悪い状態でもない
体はぽかぽか暖かいし
散歩にも出れるし
食欲はあるし
さすがに仕事をするとペンがふらつくので
読書に切り替える
村上春樹の「ねじまき鳥クロニクル」
もうじき読み終わります
多分この作品が一番面白かったな
途中からデビットリンチの映画のような雰囲気になってくるのが
たまらなくいいのかも

1月24日

ずっーとじゃないけど
1日のうちに何度か体温が38.5度以上になるんだ、と友人に言うと
それはインフルエンザに違いないと言われる
今日はちょっときついかな

1月25日

なんとなく山は越えたような
体温も下がり
今日は体がとても軽い感じ
ようやく、風邪(インフルエンザ?)が治りつつある
メールをくださった方ありがとう
ご心配をおかけしました

青山通りに新しくできたおしゃれなラーメン屋さんになにげなく入る
(本当は病み上がりなのでうどんが食べたかったのだが)
イタリアンレストランのような内装だけど
販売機で食券を買うんだよね(笑)
最近のラーメンブームは塩味のようです
魚ベースのあっさりスープが主流
(先日は松戸で煮干ラーメンというのを食べた)
でもあんまりおいしくなかったのでした
客がおれしかいないし

1月26日

友人が参加しているゴスペルグループのコンサートに行く
日本青年館
神宮球場を横目にとぼとぼと歩く
今年のヤクルトはどうだろうかと思いながらね(笑)
(スター選手がいなくても
大リーグよりしょぼくてもそれなりに面白い日本野球)
大声量
大迫力
ゴスペルを聞いていると
歌は歌うものではなくて
狼が月に向かって吠えるように
吠えるものなのだと。
人は吠え方を知らないから、歌うのだと。
そんな風に思わずにはいられない
最後は
we are the worldの大合唱
こういうものを体験すると
音楽は世界を変える力を持っていそうに錯覚するけれど
音楽は決して世界を変えない
だからすばらしい
(音楽は政治じゃないもの)
世の中が悪かろうが良かろうが
ただその場に存在し、空気の中に消えていく

1月27日

昨日ゴスペルを聞いたせいか
ウーピー・ゴールドバーグ主演の「天使にラブソングを・・」
が観たくなり
ビデオレンタル屋さんに行って借りてくる
何回見てもいい映画
うきうきしちゃうよね
ハーヴェイ・カイテルのお馬鹿な演技も素敵
一番若い気の弱そうなシスター(メアリー・ロバート)がぼくの好み(笑)
ラストはソロをとって
熱唱しているのもキュート

1月28日

またひとつむやみに歳をとってしまいました(笑)
お祝いのメールありがとうございます
今年もがんばって絵を描きます

村上春樹の「ダンス・ダンス・ダンス」を読み終える
今月は村上春樹月間でした

1月29日

村上春樹の短編集「レキシントンの幽霊」を読み終える
短編は長編と少し趣が違って
なかなかいい感じ
短編のほうが好きかも

1月30日

村上春樹の「国境の南、太陽の西」を読み終える
実は最近は電車に乗る機会が多いので
読書量が増えているのです
基本的にはぼくは小説を読むより
ノンフィクション系
(たとえば動物の生態とか心理学、科学系などの論文調の本)
の本を読むことの方が多いのです
そういう本のほうが実は小説より
ドラマティックだったり、
難解な論理を積み重ねたような硬い文章も
実はとても人間的だったりするのです
著者の論理の背後にある感情を想像するのが好きなのです
何を大切にして
著者はこの論理を展開しているのか
それを探り
それに共感するのが好きなのです
意外に
科学者のなかには詩人の素養がある人が多いのです
ロマンティックな人が多い
そういうのにうっとりしちゃうことが多いのです

天使にラブソングを..2を借りてきてみる
駄作だったらどうしようと思って
ずーっと怖くて借りられなかったのですが
なかなか良かったです

1月31日

最近
朝起きると
自分のいる場所がわからずにちょっとうろたえたりする
しばらくすると
ああ俺の部屋か、と思って安心するんだけど
多分
村上春樹の読みすぎ(笑)
(さすがにうんざりしてきた(笑)
「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」を最後に
しばらく彼から離れよう
同じ作家を立て続けに読むのは良くないよね
作家の精神世界が侵食してくるような感じがするもの)

久しぶりに
前に住んでいた場所の近くにある蕎麦屋のそばが食べてくなり
電車に乗って食べに行くが
思っていたより
おいしくなくなっているような気がして
がっかりして帰る
自分の中の味の感覚が暴走して美化されているのか
単にまずくなっているのか
どっちでしょうね

明日から引越しのため
ネットがしばらく使えなくなります
(多分3日ほど)


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